陸前高田市で1.5年の復興支援に従事した経験を持つBSRI代表が、被災地の「電気がない夜」の実態を語る。台湾からのソーラー発電機が夕方に使えなくなった理由、焚火だけが光だった避難所の現実。体験に基づいて、自治体の避難所にBESSが必要な本当の理由を解説する。

台湾から支援物資が届いたとき、みんな「これで明かりがつく」と思った。

ポータブルのソーラー発電機だった。2011年、東日本大震災から数か月が経った陸前高田市のプレハブ仮設拠点。「すぐに設置しよう」と声が上がり、嬉々として設置した。

でも、夕方になったら充電できなくなった。

当然の話だった。電気が必要なのは、暗くなってからだ。


昼間に電気を使う余裕など、なかった

筆者は東北道がまだ立入禁止だった震災直後から岩手県陸前高田市に入り、約1.5年間、初期支援から中期の復興支援活動に従事した。

最初の数か月、電力の状況はこうだった。

最大の避難所は学校の体育館だった。自衛隊のディーゼル発電車が接続されていたが、燃料がなければ動かない。プレハブが立ち始める頃には屋台で使うような小型発電機があちこちで動いていた。やはり燃料が命綱で、ガソリンスタンドも電気がないと動かなかったため、燃料を得るには内陸部か仙台方面まで行く必要があった。

携帯電話の基地局も電気がなく、電話はほぼ不通だった。輻輳が続き、つながれた人はラッキーという状態が長く続いた。

電柱を立てるところから工事が始まっていたので、系統電力が戻るまでに何か月もかかった。

昼間は避難所環境の維持と改善のために全員が動いていた。電気を使う余裕などなかった。だから台湾のソーラー発電機は、夜に使おうとして使えなかった。


焚火だけが、光のある場所だった

節電のために夜は真っ暗だった。

大人たちは毎晩、焚火を囲んで話し合った。避難所のルール、食料や日用品の在庫、自衛隊の配給の段取り、誰かが外部と連絡を取れたという話。ストレスからくるいざこざの調停。

焚火が唯一の光だった。

明かりがないと野犬や野生動物が生活圏まで入ってくる。外を歩くときにバットや棒を持っている人もいた。


2024年11月、能登で雪が降り始めていた

能登半島地震は2024年1月1日に起きた。

筆者が視察したのは同年11月。すでに雪が降り始めていた。1月の地震当時はもっと寒く、暗かったと、体でわかった。

陸前高田と状況は違う。津波で全てが流されたあの現場とは異なり、建物は残っている。しかし道路が寸断された先はヘリや船でしか支援が届かず、長期間にわたって支援物資頼みの生活が続くという点では同じだ。

視察時、山間部への道路はまだ復旧していなかった。復旧した道路も限定的で工事車両の渋滞がひどく、買い物ひとつするのに半日がかりという状態だった。道路が戻っても、日常は戻っていない。

2011年から13年経っても、変わっていないことがある。

燃料がなければ発電機は動かない。燃料の現地調達が困難な被災地では、ディーゼル発電機は長くは使えない。


「なぜ蓄電池なのか」の答えは、あの夜にある

蓄電池単体では電気をつくれない。太陽光パネルとセットで初めて、燃料なしで電力を自給できる。台湾のソーラーが役に立たなかったのは、電気を貯めるものがなかったからだ。

昼間に発電した電気を蓄えて、夜に使う。それができれば何が変わっていたか。

どれも「あれば良かった」ではなく、「なければ命に関わる」水準の問題だった。


自治体が今、整備することの意味

能登地震から2年半、東日本大震災から15年。自治体の指定避難所に太陽光+蓄電池が設置されているケースは、まだ多くない。

「災害が起きてから考える」では遅い。陸前高田でも能登でも、物資が届くまでに時間がかかった。その間に命を守るのは、あらかじめ現地に備えてある設備だけだ。

加えて、太陽光+蓄電池は平常時にも機能する。施設の電気代削減、再エネ導入目標への貢献、脱炭素計画の進捗として計上できる。避難所のBCP整備と脱炭素目標を、1つの設備投資で同時に達成できる。

補助金の申請期限に注意。環境省の地域レジリエンス交付金は毎年4〜5月に公募が始まる。自治体が申請するには前年度の予算要求(9月末が多い)に組み込む必要があり、今から動けば2027年度の申請に間に合う。動かなければ、また1年先延ばしになる。

蓄電池の選び方:自治体が知っておくべき3つの視点

① 「なぜその製品を選んだか」を議会で説明できるか

公共調達では調達の合理性を議会・住民に説明する責任がある。中国製品が価格競争力で優位な一方、「税金で中国製品を買う理由」を問われるリスクがある。選定基準の透明性が求められる。

② 国産・リユース電池という選択肢

電気自動車(EV)の使用済み電池を再生・再利用したリユース蓄電池は、新品電池の製造時に発生するCO2を大幅に抑えられる。EV普及とともに供給量が増えており、価格競争力も上がってきている。国産のリユース蓄電池は「環境配慮」「国産調達」「循環型経済への貢献」を一度に説明できる選択肢だ。SDGs報告書や議会答弁にそのまま使えるストーリーになる。

③ 補助金との組み合わせ

環境省「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設等への設備導入推進事業」では、市区町村への補助率が最大1/2。補助金を活用すれば自己負担を大幅に圧縮できる。補助金の種類・条件・申請スケジュールは施設の状況によって異なるため、専門家への相談が有効だ。

公共施設への太陽光・蓄電池導入を支援する環境省の交付金。補助率は市区町村で最大1/2。毎年4〜5月に公募。

ゼロカーボンシティを宣言した自治体の一覧。宣言済み自治体は脱炭素推進交付金の申請において優遇される場合がある。

BCP電源の選択肢を整理する:蓄電池 vs ディーゼル

医療施設の停電対策:透析クリニックの電源設計

蓄電池導入の補助金:SII補助金採択の準備

参考文献

  1. [1] 環境省「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/resilience/
  2. [2] 環境省 ゼロカーボンシティ宣言自治体一覧https://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html