「CN宣言を出せますか?」と取引先から打診されることが増えている。しかし「カーボンニュートラル宣言」とは何を宣言すればいいのか、SBTやRE100とどう違うのか、小さな会社でも出せるのか——曖昧なまま止まっているケースが多い。この記事でゼロから整理する。

「カーボンニュートラル宣言」とは何か

カーボンニュートラル宣言とは、自社のCO₂排出量を特定の年度までに実質ゼロにすることを対外的に表明することだ。法的義務ではなく、企業が自主的に行う宣言であり、様式や認定機関の指定はない。

取引先が「CN宣言を求める」のは、Scope3(サプライチェーン全体)の排出削減責任を果たすため、仕入れ先にも脱炭素への意思を確認したいからだ。大手メーカーがSBTやRE100に参加している場合、その達成にはサプライヤーの協力が不可欠になる。


CN宣言・SBT・RE100の違い

自社CN宣言SBT認定RE100
概要 自社が自主的にCN目標を表明 科学的根拠に基づく削減目標の第三者認定 使用電力を100%再エネにすることを誓約
認定・登録機関 なし(自主宣言) Science Based Targets initiative(SBTi) The Climate Group / CDP
コスト・難易度 低(自社で作成可) 高(審査料・計算・書類) 高(RE100加盟条件あり・電力調達コスト)
中小企業の取得可否 ○(誰でも可) △(SME向けSBTiルートあり) △(加盟条件:電力消費100GWh以上<グローバル基準>、日本国内特例は50GWh以上が目安)
取引先への説得力 △(内容次第) ◎(国際的に認知) ◎(再エネ分野では最高水準)

中小製造業がまず取り組むべきは自社CN宣言だ。形式は自由で費用もかからない。SBT認定やRE100は大企業向けの仕組みであり、取引先もそれを理解している。「自社宣言でも、誠実な内容であれば評価される」という前提で進めるのが現実的だ。


中小製造業のCN宣言:3つのレベル

レベル1 現状把握宣言——「まず計測から始める」
現時点でのCO₂排出量(Scope1・2)を把握し、削減に向けた取り組みを開始することを宣言するもの。「2026年度中に排出量を算定し、削減計画を策定する」という内容でも宣言として成立する。現在ゼロの企業が最初に出す宣言として適切。
レベル2 目標宣言——「○年までに○%削減」
排出量を把握したうえで、具体的な削減目標年・削減率を設定して宣言する。「2030年度までに2023年度比30%削減」など。目標の根拠(太陽光導入・省エネ設備更新など)をセットで示すと信頼性が上がる。
レベル3 CN達成宣言——「○年度カーボンニュートラル」
特定の年度に実質排出量ゼロを達成することを宣言する。削減しきれない排出はカーボンオフセット(Jクレジット購入など)で相殺することが一般的。大手取引先が最も求めるレベルだが、計画の裏付けが必要。

宣言文のサンプル(レベル2)

サンプル宣言文(自社ウェブサイト・取引先提出用)

〔会社名〕は、地球温暖化対策の重要性を認識し、以下の通りカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進することを宣言します。

目標:2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)の達成を最終目標として、2030年度までに2023年度比でScope1・Scope2のCO₂排出量を30%削減する。

主な取り組み
・工場屋根への太陽光発電設備の導入(2026年度)
・生産設備の省エネ化・老朽機器の更新
・電力使用量のモニタリングと継続的な改善

進捗確認:毎年度末に排出量を算定し、取引先へ報告する。

○○年○月 代表取締役 ○○ ○○

宣言文で大切なこと:

① 数字(削減率・目標年)を入れる ② 具体的な取り組みを書く ③ 進捗を報告する姿勢を示す

「カーボンニュートラルを目指します」だけでは取引先には響かない。現状の排出量と削減手段の具体性が評価のポイントになる。


宣言後に必要な実績づくり

宣言を出したあと、取引先からは年次の進捗報告を求められるケースがある。宣言と実績が乖離すると信頼を損なうため、宣言に書いた取り組みは実際に進める必要がある。

※ カーボンニュートラル宣言の様式・基準は今後変わる可能性がある。取引先から特定の様式・認証基準を求められた場合は、その要件を優先して確認すること。