BSRIの試算では、冷凍倉庫の電気代は同規模の製造工場と比べて1.5〜2倍になることも珍しくない。冷凍機・冷却設備が24時間フル稼働するため、最大デマンド(契約電力)が高く、基本料金だけで月の電気代の25〜35%を占める施設もある。加えてフロン排出抑制法の改正で冷媒更新コストの負担が増してきた。BESSの導入と設備更新を組み合わせて、2つの課題を同時に解決する考え方を解説する。


冷凍倉庫の電気代が高い2つの構造的な理由

冷凍倉庫の電気代が一般の工場より高くなる理由は構造的だ。設備の特性から切り離せない2つの要因がある。

① 24時間連続稼働によるデマンドの高さ

電力会社との契約では、1ヶ月の中で30分間の最大使用電力(デマンド)が翌月以降の基本料金(デマンド料金)の基準になる。冷凍設備は庫内温度を一定に保つため日夜を問わず稼働し続け、特に夏場・大量搬入後などに電力使用が集中する。この「ピーク」が1ヶ月に一度でも発生すると、翌月以降の基本料金に反映される。デマンドを下げることが電気代削減の最重要課題だ。

② 電力量の絶対量の多さ

BSRIの試算では、1,000m²規模の冷凍倉庫(冷凍温度:−20〜−25℃)の月間電力消費量は70,000〜90,000kWhに達することがある。再エネ賦課金(2026年度:4.18円/kWh)だけで月29〜38万円が上乗せされる計算だ。電力量料金と合算すると、月の電気代が200〜280万円に達する施設は珍しくない。

電気代の内訳を整理すると:

項目概要
基本料金(デマンド料金)月最大デマンド(kW)× 単価。冷凍倉庫は特に高くなりやすい
電力量料金使用電力量(kWh)× 従量単価
燃料費調整額原燃料コストに応じて毎月変動
再エネ賦課金4.18円/kWh(2026年度)。使用量に比例して増える

デマンドとは?
1ヶ月の中で最も電力を使った30分間の平均電力(kW)のこと。電力会社との契約では「1年間のデマンドの最大値」が翌年度の契約電力になる場合もある(最大需要電力契約)。一度高い値が記録されると、しばらくその水準の基本料金が続く仕組みだ。


フロン排出抑制法の改正と冷凍倉庫への影響

冷凍倉庫で使われる冷媒は長らくHFCs(ハイドロフルオロカーボン)系が主流だったが、地球温暖化係数(GWP)の高さから規制が強まっている。

日本では2015年にフロン排出抑制法が施行され、機器の定期点検・冷媒漏洩防止・廃棄時の回収が義務化された1。さらにモントリオール議定書のキガリ改正(2018年12月日本受諾・2019年1月発効)に基づき、HFCsの段階的な削減が本格化している2。先進国(日本含む)は2024年から基準年比40%削減が義務化されており、現在はまさにその段階にある。

冷凍倉庫事業者への具体的な影響は以下の通りだ:

法定点検の頻度(業務用機器の場合)
冷凍能力50冷凍トン以上の機器は3ヶ月ごとの定期点検が義務(7.5〜50冷凍トン未満は年1回)。点検記録の保存も義務づけられている1

フロン規制による機器更新は「コスト」として捉えられがちだが、このタイミングはBESS導入を同時に検討できる機会でもある。


BESSで実現できる電気代削減の2つの効果

① ピークカットによるデマンド削減

電力消費が集中する時間帯(搬入・出庫時・夏のピーク時)にBESSから放電することで、電力会社からの受電ピークを抑制できる。デマンドが下がれば翌月以降の基本料金が下がり、毎月継続的なコスト削減につながる。

BSRIの試算(1,000m²・最大デマンド200kWの冷凍倉庫)
BESSにより30kWのピークカットを達成した場合:
 月の基本料金削減:約 3〜4.5万円(電力会社・契約によって異なる)
 年間削減額:約 36〜54万円

デマンドカットの効果は電力契約の種別(低圧・高圧・特別高圧)や電力会社によって変わる。まず自社の電気代明細で「最大デマンド(kW)」の欄を確認することが出発点になる。

② 深夜の安価な電力を昼間に使う「時間シフト」

深夜料金割引が適用される電力契約の場合、深夜に低単価の電力でBESSを充電し、昼間の高単価時間帯にBESSから放電する運用で電力量料金も削減できる。

時間シフトによる削減効果の概算
昼夜の電力単価差が10円/kWhの場合、200kWhのBESSを1日1サイクルで運用すると:
 1日あたり削減額:約 2,000円(200kWh × 10円)
 年間削減額:約 60〜70万円(稼働率を加味した概算)

ピークカットと時間シフトを組み合わせた場合、1,000m²規模の冷凍倉庫ではBSRIの試算で年間90〜130万円の電気代削減を見込める(BSRIの概算。実際の削減幅は電力契約・運用方法・冷凍設備の状況によって異なる)。


フロン設備更新とBESS導入をまとめて進める3つの理由

設備更新とBESSを別々に進めようとすると、コストと段取りが二重になる。同時に進めることで以下のメリットがある。

理由① 補助金を一度の申請でまとめて活用できる

SII補助金(業務産業用蓄電システム導入支援事業)はBESS導入に特化した補助制度で、補助率1/3以内が適用される3。冷凍設備の更新時にまとめて申請・施工することで、一度で補助を受けられる。

たとえばBESS設備費が1,800万円の場合、補助後の実質負担は約1,200万円になる計算だ。

理由② 施設停止期間をまとめて短縮できる

電気設備工事を同時に実施すれば、施設停止日数を大幅に短縮できる。別々に工事すると設備停止が2回になり、在庫管理・物流調整のコストも倍かかる。冷凍倉庫は停止のたびに温度管理リスクが発生するため、工事の集約は運営面でも重要だ。

理由③ 新型冷凍機の省エネ効果とBESSが相乗的に効く

低GWP冷媒対応の新型冷凍機はCOP(成績係数=冷凍能力÷消費電力)が旧世代より高い機種が多く、消費電力量そのものが下がる。BESSによるピークカットと組み合わせると、デマンド削減の起点となる消費電力ピーク自体が低くなり、より小さなBESSで同等の効果を得られるケースもある。


費用対効果の概算(BSRIの試算モデル)

1,000m²規模(冷凍温度−20℃・月間電力80,000kWh・最大デマンド200kW)の冷凍倉庫を想定し、BESSのみ導入した場合の概算を示す。

項目概算
BESS設備費(200kWh / 100kW出力級)1,600〜2,200万円
SII補助金(補助率1/3以内)▲530〜730万円
実質負担額約1,050〜1,500万円
年間電気代削減額(デマンド+時間シフト)約90〜130万円
単純回収年数約8〜16年

回収期間が長く見えるが、以下の要因で実質的に短縮される可能性がある:

・電気代の継続的な値上がり(2022〜2025年で大手電力の従量料金は+40〜70%程度上昇)

・太陽光(PPA)との組み合わせによる追加削減(別途試算が必要)

・フロン設備更新で消費電力が下がれば、BESSの時間シフト効果がさらに高まるケースも

まず電気代明細から自社の「最大デマンド」と「月間電力量」を確認することが、具体的な試算への第一歩になる。


まとめ

冷凍倉庫の電気代削減には、デマンドの構造的な高さへの対処が必要だ。BESSによるピークカットと深夜電力の時間シフトを組み合わせることで、毎月継続的にコストを削減できる。フロン排出抑制法による冷媒更新のタイミングを活かしてBESSを同時導入すれば、補助金・工事コスト・施設停止リスクをまとめて最小化できる。

具体的な削減効果は施設の電力契約・デマンド履歴・冷凍設備の状況によって変わる。電気代明細(最大デマンドと月間電力量の記載があるもの)があれば、専門家による詳細な試算が可能だ。

フロン排出抑制法の法定点検義務・冷媒管理・漏洩防止措置の公式解説。点検記録フォームや管理者向けのガイドラインも掲載されている。対応義務の全体像を確認したい事業者にとって出発点となる情報源だ。

産業用・業務用蓄電池の導入に対して補助率1/3以内で補助する経済産業省所管の補助制度。令和7年度補正の現行公募は2026年10月30日締切。冷凍倉庫にも適用可能で、申請要件・公募要領を確認できる。

Scope1〜3の排出量算定ガイドラインを無料提供。冷凍倉庫のCO₂排出量を取引先に報告するための算定根拠として活用できる。電力使用量データがあれば算定できる。

参考文献

  1. [1] 環境省「フロン排出抑制法について」https://www.env.go.jp/earth/furon/
  2. [2] 環境省「HFCの管理について(モントリオール議定書キガリ改正)」https://www.env.go.jp/earth/ozone/hfc.html
  3. [3] 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)「令和7年度補正 業務産業用蓄電システム導入支援事業(公募期間:2026年3月24日〜10月30日)」https://sii.or.jp/DRchikudenchi_gyousan07r/public.html