「BESSを入れたい」と思っても、「何kWh必要か」がわからないと業者に適切な提案を求めることができない。BESSの容量とROIは電力の使われ方によって大きく変わる。この記事では、BESS導入前に必要な電力データの集め方と、それを活かした試算の考え方を整理する。

BESSサイジングに必要な2つのデータ

BESS導入の規模(容量・出力)を決めるうえで最低限必要なデータは2つだ。

電力会社から毎月届く電気代明細には「月間使用量(kWh)」「最大需要電力(kW)」は記載されているが、時間帯別データは含まれない。より詳細なデータを得るためには追加の手段が必要だ。


データを集める4つの方法

1
電気代明細12ヶ月分の読み込み

まず手元にある電気代明細を12ヶ月分並べる。月ごとの使用量(kWh)・最大需要電力(kW)・デマンド料金を読み取るだけで、季節変動・ピーク月・デマンド超過の傾向がつかめる。

取得できるデータ:月間使用量・月最大需要電力・基本料金の算定根拠(直近12ヶ月最大デマンド)
2
電力会社の法人向けデータサービス・スマートメーターデータの取得

高圧契約(キュービクルあり)の場合、電力会社のWebサービスから30分単位のデマンドデータをCSVでダウンロードできる場合がある。東京電力・中部電力・関西電力などが提供しているが、契約種別・申込み状況によって利用可否が異なる。

取得できるデータ:30分単位の使用電力(kWh)・30分デマンド(kW)。過去1〜2年分のデータが取得できると精度が上がる
3
省エネセンターの無料省エネ診断(工場・事業場向け)

一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)は、中小企業向けに無料の省エネ診断を実施している。診断員が工場に訪問し、設備ごとの電力消費量・省エネ余地を診断してくれる。BESS導入の可否判断材料にもなる。

費用:無料(中小企業向け)1
申込み:省エネルギーセンター公式サイトから申込み可
4
簡易電力モニターの設置(低コスト計測)

分電盤にクランプ式の電流センサーを取り付けるだけで、リアルタイムの電力消費量を記録できる安価なモニターが増えている。1台数万円から導入可能で、1〜2ヶ月計測するだけで充放電スケジュール設計に使えるデータが集まる。

費用目安:計測機器3〜10万円程度
取得できるデータ:1分〜15分単位の消費電力。昼夜・曜日のパターンが見える

集めたデータでわかること

データBESSサイジングへの活用方法
月最大デマンド(kW) BESSの出力(kW)をどれくらいに設定するかの基準になる。デマンドのピーク時間帯にBESSを放電してピークカットする容量を計算できる
昼間・夜間の電力パターン 時間帯別単価(昼間高・夜間安)がある契約なら、夜間に充電・昼間に放電するサイクルの収益性を試算できる
太陽光と消費のずれ 昼間に発電ピーク・消費ピークがずれている場合、BESS容量を大きくすることで自家消費率が上がる
季節変動 夏季のみデマンドが高い場合、季節限定の放電プログラムで対応できるかどうかを判断できる

最低限の着手手順:

① 電気代明細12ヶ月分を用意する(今すぐできる)
② 月最大デマンド(kW)・月間使用量(kWh)を表に転記する
③ 「デマンドが最も高い月」と「電力使用量が最も多い月」を特定する

この3ステップだけで、業者への見積もり依頼や専門家への相談に十分な情報が揃う。

※ 高圧契約(50kW以上)と低圧契約(50kW未満)では使える設備・補助金・市場参加の条件が異なる。現在の契約種別を確認したうえで設備選定を進めること。低圧(49.9kW以下のBESS)の場合、SII補助金の対象になりやすく、初期投資を抑えやすい。

参考文献

  1. [1] 一般財団法人省エネルギーセンター「省エネ最適化診断(工場・事業場向け)」https://www.eccj.or.jp/shindan/